カプコンは、8月17日にPC向けアクションシューティングゲーム「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」のアップデートパッチを配布すると発表した。アップデートは同タイトルでも採用しているゲームプラットフォーム「Steam」を通じて配布される。

このアップデートパッチは、DirectX 10バージョンに関するもので、DirectX 10の機能を現行バージョンよりも盛り込みビジュアルを向上、さらにDirectX 10環境下でのパフォーマンスをDirectX 9版以上に高めることを可能としている。この発表に先立ち、カプコンはNVIDIAとともに説明会を開催し、同アップデートパッチについて解説した。

カプコンからは、カプコン 開発統括本部 CS開発統括 編成部長 竹内潤氏、第二制作部ソフトウェア制作室 プログラマー 石田智史氏、第一制作部 ソフトウェア制作室 プロダクトマネージャー 齊藤康幸、第二制作部 ソフトウェア制作室 室長 伊集院勝氏がそれぞれ説明を行った。まずパフォーマンスに関して、同社の調べでは、同一のグラフィックオプション、ドライバがForceware 162.22という状況で、DirectX 10環境がDirectX 9環境を10%~20%ほど上回る。また、同じオプションでドライバがForceware 158.24という現行のDirectX 10環境と比較しても飛躍的に(SLI時)性能が向上するとされる。これまで重いと言われてきたDirectX 10環境だが、最適化を進めることでここまで高速化できるということが証明されたとともに、こうして実現した高速化分をDirectX 10のビジュアル向上機能に割り当てることで、ロスト プラネットの世界をよりリアルに楽しむこともできる。

DirectXおよびドライバのバージョンでの比較グラフ。最新ドライバによりDirectX 10のパフォーマンスが一気に向上

同一ドライバでDirectX 9と比較してもDirectX 10が10~20%ほど高速

SLI時にはさらに170%程度のパフォーマンスアップ

今回のアップデートパッチによるビジュアル表現の向上については、DirectX 10のジオメトリシェーダーを用いた「モーションブラー」「被写界深度」「ファーシェーダー」の3点について解説があった。

DirectX 10によるジオメトリシェーダーを用いたモーションブラーでは、DirectX 9と比較し、重なり部分での破綻を軽減でき、リアルタイムレンダリングではない64x Super Samplingによるレンダリング結果に近い品質まで高めることができたとされる。同じく被写界深度では、輪郭の滲みや近景のハードエッジを軽減、六角形など任意の絞り形状を可能とし、またHDRにも対応する。また、ファーシェーダーでも、より自然な毛の描写が可能となっている。

スクリーンショットからDirectX 10とDirectX 9とを比較して確認してみよう。被写界深度のサンプルでは、まず遠景のボケがより自然なものとなっている点に加え、近景となる中央キャラクターの輪郭はシャープなまま残っていることがわかる。また、遠景になる光源は、DirectX 9の場合では全体的にボケて弱まっているところ、DirectX 10ではその強烈な光りを保ったままの描画となっており、こちらの方がより自然に見える。

DirectX 9での被写界深度サンプル

DirectX 10での被写界深度サンプル

モーションブラー、ファーシェーダーのサンプルでは、特にDirectX 9の描画では「何度もレンダリングしました」というような「重ねた」イメージの描画だが、DirectX 10では本来の素早い動きや、毛先まで綺麗な描写が行われている。特にファーシェーダーは、ロスト プラネットの一部のモンスターにも適用されており、昆虫らしい質感を演出するのにも役立っている。

DirectX 9でのモーションブラーサンプル

DirectX 10でのモーションブラーサンプル

DirectX 9でのファーシェーダーサンプル

DirectX 10でのファーシェーダーサンプル

その他、アップデートパッチによる変更点をまとめておくと、まず製品版に従来まで体験版のみだったPerformance-Testが追加されている。このPerformance-Testは体験版との互換性を持つとともに、AIの挙動の安定化、フレームレート表示に小数点一桁を加えたといった違いもある。さらに、PC-Settingに関しても変更が加えられている。例えば新たなDirectX 10機能を有効にするには、モーションブラー、被写界深度ではフィルタオプション、ファークオリティなどを「DX10」に設定する。また、シャドウクオリティに関しては、DirectX 9において「HIGH」(16サンプルのバイリニアPCF)が選択可能となったほか、「DX10」では32サンプルのランダムPCFが利用可能。

今後のカプコンは「マルチプラットフォーム戦略で行く」

今回の説明会では、竹内氏よりカプコンの将来の製品展開についても説明があった。竹内氏は、「(次世代)コンソール機では勝者が見えない」と述べ、マルチプラットフォームと海外進出を加速することで、混沌とした市場に対し柔軟に対処する戦略をとるとした。また、その際「PCもひとつのプラットフォームである」とし、同社として本格的にPCゲームに参入することを明らかにした。

カプコン 開発統括本部 CS開発統括 編成部長 竹内潤氏

このマルチプラットフォーム戦略で核となるのが、独自開発の新ゲームエンジン「MT Framework」となる。今後、MT Frameworkが各タイトルの共通のエンジンとなるとともに、DirectX 10など、APIのアップデートとともに随時アップデートするとしている。また、ロスト プラネットでは、Xbox 360版が先行する形となったが、今後に関してはまずPCを開発の起点に据えるという。使用するテクスチャ等、いちばん高いクオリティを求めるのがPCという理由もあり、このPC版を元とすれば後はMT Frameworkを通じて各プラットフォームへの移植が容易に行えるというのが同社の狙いである。

NVIDIA コンテンツリレーションズ事業本部/アジア太平洋 部長 飯田慶太氏

最後にカプコンとNVIDIAとの関係についても竹内氏、そしてNVIDIA 飯田慶太氏から説明があった。各社と話をした結果、NVIDIAが「ゲームへの情熱が熱かった」と竹内氏は述べている。NVIDIAは、GeForce 8シリーズの開発中からシミュレーションを提供するなど深く関わっているという。ロスト プラネットの開発が進行するとともに、カプコンの開発陣からはバグ情報が提供され、それをNVIDIAが検証・フィックスするという作業を連携して行い、Forceware 162番台のドライバではほぼバグフィックスが完了していると言う。

NVIDIAの資料より、世界でリリースされるゲームタイトルの動作を検証するモスクワのラボ

ロスト プラネット エクストリーム コンディション
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