既存放送・プラットフォーム規制の是非
――取りまとめ案における問題点はどういった点があげられるでしょうか
基幹(地上波)放送事業者から規制緩和に関する要望が出ていないことです。さきほどお話しましたように、伝送設備や伝送サービスの規制緩和により市場が活発化することが予想されます。こうした状況下で、基幹放送だけ何も変わらないということであれば、相対的に規制強化されたのと同じようなことになります。
私はこれに対し、研究会の中でも「放送局の意見を聞くべきだ」と常々言ってきました。今後の議論では、放送業界がどういう制度を望んでいるのか、きちんとヒアリングをしていきたいと思っています。
また、中間とりまとめ案でひとつのレイヤーと位置づけられたプラットフォームに関する体系ですが、これには反対しました。
というのも、伝送サービスや伝送設備、コンテンツに関しては既存の法律があるのに対し、今回「プラットフォーム」と位置づけられた規制対象に関しては何もありません。今回の中間とりまとめ案においても、規制する必要の是非について検討するとしており、そうした意味では、私は必要性があるとは思っていません。
IP時代の法整備は世界に対する日本の責務
――パブリックコメントの結果が報告される8月10日の第13回会合以降、どのような点について議論を深めていく必要があるのでしょうか
法体系を再編することで、具体的にどのようなメリットがあるのかを、国民や産業界に定量的に説明していかなければなりません。さきほども述べましたが、法律を決めるのは立法府である国会です。きちんとした法律となって、国会を通っていけるものにするため、ちゃんと議論していかなければならないでしょう。
通信・放送に関する法をここまで大規模に再編する試みは、実は日本が初めてといえます。IP時代の法体系はどうあるべきかのモデルはほとんどなく、ネットワークの先進国を自負する日本が、その仕組みを編み出していくべきものです。ものすごい大仕事になりそうですが、日本の責務と言ってもいいかもしれません。
今回の再編は、通信・放送制度に訪れる10年に1度の波のひとつだと考えています。10年前はコンピューターなどの機器とネットワークを一緒にするための議論が行われました。現在は、著作権法などの知的財産や医療・教育の情報化などを含めた通信・放送の再編に関する議論が進んでいます。
そうした意味では、私たちが行っている議論は、メディアに関するものが中心で、著作権法なども含めた国全体での制度見直しの入口といえるものです。いわば「ベースのベース」の法体系です。コンテンツの世界を引っ張っていくのはあくまで民間のビジネスですから、我々はそれを支えるための法制度をちゃんと整えるのが役割だと思っています。