今年も、コンピュータグラフィックス、バーチャルリアリティ、インタラクティブテクニックなどの学会/カンファレンスとしては世界最大規模の「SIGGRAPH」が、アメリカ、カリフォルニア州南部のサンディエゴ市で開催される。このSIGGRAPH 2007の開幕に併せ、関連したカンファレンスもいくつか開催されている。

次世代のグラフィックス・ハードウェアのための新技術を取り扱った学会/カンファレンスである「GH:GRAPHICS HARDWARE」もその1つだ。

本レポートでは、このGH2007で発表された技術のうち、興味深いものをピックアップしてみることにする。

SIGGRAPH 2007併催学会「GRAPHICS HARDWARE」。昨年はEUROGRAPHICSの併催学会であった

マイクロソフト・Chas. Boydが基調講演

GH2007の基調講演は、マイクロソフト、ソフトウェアアーキテクト、WindowsグラフィックスのChas. Boyd氏が「Mass Market Applications of Data-Parallel Computing」と題して行った。

マイクロソフト、ソフトウェアアーキテクト、WindowsグラフィックスのChas. Boyd氏

これまでのプロセッサが「クロックスピードの増加」「命令レベルでの並列実行の強化」という進化の方向性でやってきたのに対し、ここ最近から近未来のプロセッサは「キャッシュ容量の増加とコア数の増加」の方向性で進化していくトレンドにあることを述べつつ、こうなった以上、課題は、こうしたマルチコアCPUや、GPUのようなデータ並列処理プロセッサを効果的に活用するソフトウェアパラダイムの進化にあることを指摘した。

命令レベルの並列化の進化は一区切り。今後はマルチコア化がプロセッサアーキテクチャのトレンドとなる

サーバーなどの場合は、サーバーアプリケーションが元々、比較的マルチコアをうまく活用する設計となってきていたために、このトレンドにある程度うまく適合できているが、問題は、一般ユーザーが活用するアプリケーションソフトウェア(Mass Market Applications)での活用の方だ。

技術的には興味深いマルチコア。しかし一般的なアプリケーションで恩恵を享受できなければ主流にはなれない

そうした一般アプリケーションとしては、動画像のエンコード、デコード、トランスコードや、ビデオ編集やビデオエフェクト、画像の処理や、そしてもちろんゲームなどが挙げられるとした。今でもある程度のことができているが、このプロセッサのマルチコア化、並列データ処理高効率化の進化が、そうしたアプリケーションのリアルタイム・インタラクティブ性を高めたり、あるいはAI的な自動支援までを行ってくれるようになれば、ユーザーはその恩恵を享受できていると実感できるだろうと、氏は予見した。つまり、今までのアーキテクチャのプロセッサでは、理論的には有効であることがわかっていても、複雑すぎて実装が難しかった技術を、どんどんリアルタイム実装して実用化していこうという流れが有効だということだ。

マルチコアを有効活用する…すなわちマルチスレッドが有効なアプリケーションとはなにか?

たとえば、ゲームについて考えてみても、GPUのプログラマビリティの向上は、3Dゲームグラフィックスをよりリアルにするだけでなく、たとえばCPUが担当してきたAI、アニメーション、物理シミュレーションといった分野をGPUに行わせることを可能にしたり、あるいはオフラインで生成しておかなければならなかったコンテンツデータ(テクスチャ画像やゲームのステージデータなど)を動的にプロシージャル生成するようなアプローチがどんどん実用化していくのではないか、とBoyd氏は予想する。

ゲーム処理において、これまでCPUが行ってきたことをGPUで肩代わりしたり、あるいはオフラインで事前生成していたコンテンツをランタイムで生成するようなアプローチが今後一般化する可能性がある