リアルより先にバーチャルで:Starwood Hotel

2006年9月、Starwood Hotelは2008年にオープン予定の新しいホテル「Aloft Hotel」をリアル世界に先駆けてSL内で建設する、と発表しました。SL内では建設費と工期が少なくて済むことを生かし、リアル世界より先に建設することでシミュレーションを行い、不特定多数の人に自由に見てもらい意見をもらうことを目的としています。

Starwood Hotel

建設の様子は専用のブログで随時レポートされていて、ユーザーが完成までの過程をも楽しめるように工夫されています。アイデアをユーザーから募集するなどといったこともこのブログを通じて行われているようです。

SL内では途中クローズドになっていた時期もありましたが、現在では再びオープンしており、「aloft island」というSIMにあります。ホテルの建物や部屋だけでなく、周囲の庭園やプールなども再現してあり、遠目に見ても美しい景観になっています。

SL内リアルメディアとして:Reuters

2006年10月、ロイター社がSL内に支局を開きました。このニュースはSL関連のニュースの中でもとりわけ大々的に各種メディアに取り上げられ、SLの知名度を一気に上昇させるきっかけにもなりました。

ロイターの進出で画期的だったことは、Adam Reuterというアバター名の専門の特派員を置いたことです。彼はリアル世界でAdam Pasickという名前の実在のジャーナリストで、SL専門の記者として赴任し、今も活動しています。扱う内容はリアルからSL、SLからリアルの両方のニュースであり、WebサイトとSL内の両方で読むことができます。

SL内にある「Reuters」SIMでは決まった時間にAdam Reuterがいることになっています。また、ロイター配信のニュースをリアルタイムで表示するアイテムは無料で入手でき、ヘッドアップディスプレイとしてアバターのインタフェースに身に着けたり、据え置き式のパネルとして自分の土地に置いたり、壁にかけておくことができます。

バーチャルワールドの可能性を研究:IBM

IBMはSLのようなバーチャルワールドがビジネスにもたらす可能性に強く注目している企業の1つです。これまで紹介してきた事例はSLを主にマーケティングの分野で活用しようとしていたものでしたが、IBMの場合は研究・調査目的で活用しようとしています。

1つの例は、Circuit CityやSearsといったアメリカの小売店と連携し、消費者行動の研究をしているというものがあります。単純にWebに誘導してEコマースにつなげるといったことにとどまらず、購入した後自宅に設置するときの最適なプランを提供したり、カスタマーサポートに利用したりといったことを考えているようです。

実際には、IBMは将来的には独自のバーチャルワールドを構築しようと考えており、そのためのノウハウ蓄積と研究のためにSLで活動しているという側面も少なからずあるようです。 SLが将来的にバーチャルワールドの中心的存在になっていくのかどうかはまだ誰にも分かりませんが、現時点ではSLは規模からいっても内容の充実度からいっても最も有望なバーチャルワールドであることは確実で、しばらくは他の企業もSLを主要なターゲットとしてくると予想されます。