Eコマース:アディダスとリーボック

さきほど紹介した日産はSentraやAltimaのマーケティングをSL内でとどまらせるものでした。「認知→関心→欲求→行動」と続くAIDAモデル(消費者の消費行動プロセスを説明した仮説の一種)で言えば、「関心」や「欲求」の部分までを目的としたものでした。最後の「行動」とは実際の購買行動のことですが、インターネットでこれを行うのがEコマースということになります。SLを通じてユーザーを実際の購買行動まで誘導しようとしている企業の好例がアディダスとリーボックです。

Rbk Custom

自動車の場合はリアルとSLではかなり異なりますし、非常に高価な買い物ということもあり、SL内でのマーケティングにとどめておいた日産の選択は正しいものであると思います。逆に靴のようなアイテムはEコマースに適しています。また一口に「靴」といっても、リアルの世界同様扱う商品の性格にあわせてさまざまなマーケティングの方法を展開できます。

アディダスとリーボックはすでに合併して1つの企業となっていますが、両社ともにSL内でのプロモーションを手がけたのはRivers Run Redというイギリスのデベロッパーです。両社のSIMである「Adidas」と「Reebok」はお互い近くにあり、造りも似ていますが、それぞれプロモーションの仕方に特徴があります。

アディダスがプロモーションしているのは「a3 Microride」という靴で、白いデザインのものと、黒とオレンジのデザインのもの2種類です。白いほうは宇宙飛行士を、黒とオレンジのほうは跳躍競技のアスリートをそれぞれイメージキャラクターにしています。 この靴はSL内では50L$で売られています。身に着けるとバウンスモードへと切り替えることができ、SIM内で歩いたりジャンプするとアバターが軽快に上に跳ね上がります。そこで、この靴のコンセプトが非常に軽く、ジャンプも軽快にでき、足への負担が少ないということが印象づけられます。

リーボックがプロモーションしているのは「Rbk Custom」という自由に配色をカスタマイズできる靴です。SL内の店舗で売っているのはブランクの真っ白な靴だけで、これを各ユーザーが店舗内にあるブースへ持っていき、パーツごとに配色を選択していくことで靴が完成する仕組みです。Webでも同様の仕組みでカスタムデザインを試すことができますが、SL内では3次元でより自由な視点で観ることができるという点と、アバターがその靴を履くことができるので愛着が湧きやすいという点が特徴です。

両社ともにWebのEコマースのページに積極的に誘導しているのが特色です。SL内で試して興味を持ってもらい、そのまま購買行動へつなげようという意図があります。