KDDIの小野寺正社長

KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は「ワイヤレスジャパン2007」の基調講演で、「KDDIはICTのソリューションをワンストップで提供できるオールラウンドプレーヤーになる」と語り、固定/移動体、双方の通信を統合化させるFMC(Fixed Mobile Convergence)を推進していく中で、企業向け事業を重点化する基本政策を明らかにし、SaaS型のサービス提供に注力していく意向を示した。

企業向けサービスを進めるうえでの重要な点として、小野寺社長はまず「ワンストップ化」を挙げる。システム、ネットワークのソリューションを包括的に提供するとともに、運用とサポートを一体化させ、さらには、料金の請求も一本化する。これまで通信事業者は「WAN、LANを別々に扱っていた」(小野寺社長)。窓口がバラバラで、実際のシステムの運用とその保守が分かれていれば、ユーザー企業の利便性からかけ離れたものとなる。これらの「ワンストップ化」は「顧客の要望であり、応えていきたい」(同)としている。

次に、「固定とモバイルのシームレス化」を挙げている。企業側からみれば「ニーズに適した形であれば、(固定でもモバイルでも)どちらでも良いだろう。デバイスが何であるかにかかわらず、いつでも、どこでものサービスを、(KDDIのFMCの基盤となるプラットフォームである)『ウルトラ3G』の上で実現していく」意向だ。

さらに、小野寺社長は「所有から利用料モデルへの移行」を重視する。企業向け事業では、大企業向けにはさまざまな手法が考えられるが、「問題は、中堅・中小企業にアプリケーションをどう提供していくかだ。システムを自社で所有するしかない、というわけではなく、利用モデル」という方式がある。「アプリケーションはしょっちゅうバージョンアップがあり、インストールには費用、時間などコストがかかる」が、事業者がネット経由で、ソフトをサービスとして供給するSaaSなら、こうした課題が解決する。「KDDIは、SaaSが顧客のニーズに適合したものと考えている」

同社のICTソリューションは、固定/モバイル、WAN/LANを統合的に捉え、IP網の上でセキュリティを確保、ソフトもSaaSで提供する、といった構造になる。「法人側からいえば、KDDIに頼めばすべてのサービスがそろう」ようにすることを目指す。SaaS型では、ユーザーは「常に最新の技術が利用でき、運用も保守もKDDIが引き受ける」。従来、SaaSはITベンダーが提供しているわけだが、同社の場合、通信基盤を保有し、通信サービスまでもが手中にあることが強みとなる。

また、このようなICT戦略の延長線上では、携帯電話端末への取り組みも異なってくる。「これまでは、コンシューマ向け端末をそのまま企業向けにも提供してきた。しかし、バッテリの駆動時間など両者の間ではニーズがちがう」。同社では「B01K」「E02SA」「E03CA」など法人向けの端末を整えており、バッテリ寿命、セキュリティ、筐体の堅牢性などの点で、企業での用途に応じた強化を図っている。「法人向け端末は、個人向けとは別に伸びていくとみている。それらの端末で、これまでにはないサービスを提供していきたい」

また、ユビキタス環境の実現に向け小野寺社長は「従来、なかった技術が必要」とみている。現行では、固定系、移動系とアクセス系の仕組みがそれぞれ別々だ。このような状況では「サービスに限界がある」という。さまざまサービスを統合化することを目指すのがFMCであるにもかかわらず、アクセスの足回りが分散していては、真の利便性が確保できない。「3Gの端末、無線LAN、(ADSLなど)有線のサービスなどを、どのようなネットワークでつなぐか。顧客のニーズは、これらを一元的に管理して利用するところに出てくる」として、「一つのパケットベースのコアネットワークで、すべてのアクセスを連携させる」ことが望ましい、との見解を示している。