そして第2部となる「日本の有人宇宙活動は新たなステージへ--宇宙のくらしと宇宙食--」では、有人宇宙環境利用プログラムグループ企画推進室 参事・福田義也氏から宇宙飛行士の船内での様子や、宇宙食の歴史について解説がなされた。会場には、宇宙船内で宇宙飛行士たちが休憩時間に散髪をしたり、ギターを弾く様子が映し出され、「切った髪が船内に散らばらないよう、掃除機のようなものですぐに吸い取ります。ギターは……船内では絶えず機械音がなっているので、あまり聴こえないでしょうね(笑)」。
その後は、1958年から現在にかけての宇宙食をスライドで紹介。私が抱いていた「宇宙食といったら粉末やゼリー状のもの」といったイメージは、1960年頃のものだった。古い……。最近では私たちが普段食べているレトルトカレーやカップ麺、インスタントスープなどとほぼ同じものが宇宙食として用意されている。現在、宇宙食として認定されている食品の種類はアメリカが200種類、ロシアが100種類。日本は29種類となっている。
ここで、楠田さんからこんな提案が。「いま、和食は世界的なブームですよね。中でもお寿司は大人気。お寿司を宇宙食にしたら、外国の宇宙飛行士も喜ぶのではありませんか」。「おっしゃるとおりで、すでに寿司だけではなく、フグ刺しなどの開発にあたっていますよ」と福田氏。
宇宙船でお寿司、月でフグ刺し。地球に住んでいても毎日食べられるものではないというのに……。宇宙食は、どうやら私の考えとは数段階違うレベルに達しているようだ。私たちが月旅行できるようになる頃には、普段食べているものが宇宙船や月でも食べられるようになっているのではないだろうか。アポロ11号の月面着陸から約40年。遥か彼方の別世界のように感じてきた月も、実はそう遠くない存在なのかもしれない。そんな風に感じさせてくれたシンポジウムだった。