ボルボはC30の開発に際し、イギリス・ロンドンにおいて入念なユーザークリニックを実施したという。結果、ユーザーの多くは"夢のクルマ"としてスポーティな2ドアクーペを望んでいるということが判明した。こうしてボルボのワールドワイドの顧客層を広げる手段としてコンパクトカーが企画された。確かに全長は4250mmと国産プレミアムコンパクトのトヨタ・ブレイドより10mmだけ小さい。全幅はC30が1780mmとブレイドよりも20mm大きい。全高はC30が1430mmと低いのに対してブレイドは1515mm(4WDは1530)と高い。背が低くワイド、C30はブレイドよりも大きく見え、かつスポーティな雰囲気だ。

試乗車は先行輸入されたモデルで市販とは若干仕様が違うが、エクステリアなどは市販モデルとほとんど変わらない。2ドアハッチバックの4人乗りモデルが日本のヤングユーザーにウケるかは疑問だ

搭載エンジンはボルボ得意の直列5気筒。S40やV70に搭載されているものと基本的に同じ。排気量もNAが2.4Lでターボが2.5Lというのも上級車と変わらない。ブレイドも近く3.5Lエンジンを搭載したモデルが登場するから、C30のターボモデルであるT-5と似たパッケージングになるわけだ。日本市場にC30を導入したのは前述のエントリー層の取り込みとは別に、団塊の世代への対応がある。V70やS80を卒業したシニア世代のニーズに対応した、コンパクトプレミアムを用意するということ。

だが困ったことにC30は2ドアで、しかも4人乗りというクルマだ。日本ではシニア世代でもいざというときに5人が乗れるクルマの需要が根強いし、2ドアとなると乗降がきつくなる。ボルボではC30に4ドアを用意するつもりはないというから、日本ではボルボがコンセプトとして固めたヤングユーザーにアピールするしかないのだ。

まず試乗したのはNAの2.4Lエンジン搭載の2.4i SEに相当するモデルだ。じつはこの試乗車は先行輸入車両で、実際にデリバリーされるC30と仕様が若干違っている。そのためセンターコンソールなどのデザイン形状などが変わって、実際に販売される仕様は08年モデルになるという。コンパクトなボディは車両重量も1420kgに収まっているため加速感は2.4Lでは標準的なもの。5速ATのつながりがよく市街地ではスムーズな走り。試乗時はカメラマンも含めて3人での乗車だったが市街地のフィールとは違い、高速道路では意外にパワー感がない。追い越し加速をするとATが高いギヤを保ったまま加速するので、トルクが盛り上がる4500回転までの加速が鈍いのだ。もちろんATをキックダウンさせて1段低いギヤを使って加速すればそれなりの走りを見せるが、プレミアムらしい余裕ある加速感は期待できない。

ボルボの安全コンセプトカーのSCCのデザインをそのまま受け継いでデビュー。バンパーレベルまで食い込むガラスハッチと幅広のショルダーラインが特徴

コンパクトセダンのS40とコンパクトワゴンのV50と同様にセンターパネルはフローティングデザイン。パネル奥の小物入れの端から出ている白い線は、オーディオにiPodを接続するための外部入力コード

ホワイトの本革シートはプレミアム感があっていいが、リヤシートに2人しか乗れないというのは残念

インパネ周り

好印象だったのはやはりターボモデルT-5だ。NA2.4Lの170馬力に対しT-5は230馬力。高速域でも余裕の走りを見せる。発進加速でもトラクションコントロールを解除しておけば、軽いホイールスピンを伴いながら気持ちいい加速感を味わえる。試乗車はオプションのスポーツスプリングキットが装着されていたが乗り心地はそれほど荒くなく、スポーティモデルらしい抑えの効いたボディの動きが好印象だった。荒れた路面では多少バネ下がドタバタする感じがあるが、2ドアのスポーティモデルとしてはこのサスペンションが似合っている。

2.4iアクティブは285万円という魅力的な価格だが2ドアプレミアムコンパクトというクルマのキャラクターに合った走りが楽しめるのは387万円のT-5だ。

ラゲッジスペースはそれほど大きくなく、ワゴン的な使い方がしにくい。もちろんリヤシートを倒せば十分なスペースになるが、そうなると2シーターとしてしか使えない

ターボエンジン搭載のT-5はプレミアムコンパクトカーらしい余裕ある走りが楽しめる

C30シリーズの価格
Volvo C30 2.4iアクティブ 285万円
Volvo C30 2.4i SE 348万円
Volvo C30 T-5 387万円

丸山 誠(まるやま まこと)

自動車専門誌での試乗インプレッションや新車解説のほかに燃料電池車など環境関連 の取材も行っている。愛車は現行型プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングして いる。
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
RJCカー・オブ・ザ・イヤー選考委員