オンキヨーは、ソーテックを子会社化すると発表した。同社株式の公開買い付け、第3社割り当て増資により、同社株を取得する。オンキヨーは、AV機器とパソコンを融合化した製品の展開を強化しており、ソーテックのパソコン技術力、保守業務のノウハウなどを統合、相乗効果といっそうの事業拡大を狙う。オーディオ市場において、AV機器が、パソコンの技術を応用、さまざまなデジタルメディアと複合しながら成長する「デジタルホーム市場」へと変容しようとしていることに対応する。公開買い付けはの期間は7月3日から31日までで、価格は1株につき26,434円。公開買い付けと第3社割当増資により、オンキヨーはソーテックの発行済み株式の50.1%を取得する予定だ。

市場環境の変化を見据え、オンキヨーは、新経営戦略「全速プランV625」を策定、デジタルホーム市場で主導的に事業を展開できるよう、コンテンツ配信から再生機器端末であるエンターテイメントパソコンやアンプ、スピーカーまでを包括的に扱える企業への転換を目指している。

その一環として、同社は従来からの事業領域であるオーディオ市場に加え、新たな事業分野、パソコン市場へと事業を拡大する施策を打ち出し、インテルの技術協力を得て、2006年春には、インテル Viivテクノロジー搭載パソコン「HDメディア・コンピューター」を、そして今春には、当社のハイコンポ「インテック」を基盤としたHDオーディオコンピューター「HDC-1.0」を発表するなど、パソコン関連事業に注力し始めている。これらの製品は、同社が新たな世界で浸透していくための戦略商品と位置づけている。

一方、ソーテックは、量販店向けの販売に加え、BTO(受注生産)販売、法人向け販売、周辺機器販売を主要な事業とし、パソコンメーカーとして独自の地位を築き、年間17万台を超える販売実績があるが、近年は、採算性の良いBTO販売に注力し、BTO生産比率はパソコン販売の約70%を占めるという。しかし、パソコン市場は、個人消費の多様化などの影響と競争激化で厳しくなっており、同社の2007年3月期の売上高は155億8,400万円、営業損益は9億9,100万円の赤字、純損失は11億6,900万円で、6期続けて当期純損失を計上している。

オンキヨーによれば、このような状況の下、ソーテックの発行済株式総数の約15.9%を保有する筆頭株主であるACTIVInvestments Fund L.P.(以下「AIF」)は、同社の企業価値向上策について相談をオンキヨーにもちかけるとともに、ソーテックも財務支援を要請、オンキヨーはこれを受け、同社との間の事業提携、財務支援を含む資本提携について検討してきたという。

その結果、ソーテックがオンキヨーグループに参加すれば、同社グループのパソコン事業の開発・技術力の向上と生産体制の効率化、カスタマーサポート体制の強化が見込まれ、「デジタルホーム市場でのプレミアムブランド」としての独自の地位確立に貢献できると判断、ソーテックがもつパソコンの企画力、量産設計技術、ベアボーン生産などをオンキヨーのアナログ技術やデジタルネットワーク技術を融合させることで、「信頼性とオリジナリティの高い商品の開発が可能となり。あわせて、ソーテックとの経営資源の統合による企画・開発・設計の効率化、当社の持つ生産ノウハウによりBTO生産の効率化を図り、品質の向上および原価低減が見込まれる」(オンキヨー)とみている。

ソーテックは今回の同社株公開買い付けに賛意を示すとともに、オンキヨーとの業務・資本提携により、厳しい財政状態から脱却して、事業拡大を進める上では、シナジー効果が見込まれる企業と業務・資本提携をすることにより、財務的信用力を高め、魅力的な新商品の開発・商品化を図る必要があると判断した、としており、オンキヨー傘下に入ることで、部材調達コストを低下させ、製品価格競争力を向上させることができる、と判断した。

電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、2006年度の国内パソコン出荷実績は、台数は対前年同期比6%減の1,208万9,000台、金額は同9%減の1兆4,653億円、台数では2002年度以来4年ぶり、金額では2期連続の前年割れとなっている。パソコンの世帯保有率(総務省調べ)は2005年で8割を超えており、市場は成熟化している。OSとCPUにより基本仕様は決まっているため、商品としての独自性を打ち出すのは容易ではなくなっているなか、AVなど、特定の機能強化は、こうした厳しい市場環境に抗する策の一つだ。一方、音響メーカーにとっては、パソコン的機能、ネットワーク機能の取り込みは急務といえる。業界の垣根を越えたさまざまな提携は、今後も少なくないだろう。