ウェアラブルコンピュータ研究開発機構(チームつかもと)は3日、大阪・吹田市の万博記念公園自然文化園内で「モバイルネイチャーラリー in 万博公園」を開催した。携帯電話のQRコード読み取り機能を利用して公園を散策するゲームで、参加者の歩行速度に応じてコースが自動設定されることなどが特徴。
休日を楽しむ家族連れなどが訪れていた万博記念公園。曇っていたが、雨は降らず暑さも厳しくなく、ウォーキングには絶好だった |
参加者はまずスタート地点のQRコードを携帯電話で読み取り、画面に表示される最初のチェックポイントを確認する。チェックポイントまで行くと次のQRコードが用意されており、これを読み取るとその地点に関した情報とクイズが表示される。クイズに解答すると次のチェックポイントが指示されるのでそこへ向かう。これを繰り返し、5つのチェックポイントを回ってスタート地点に戻ってくるとゲームは終了となり、クイズの答えなどを知ることができる。
ネイチャーラリーの仕掛けとしてはユニークだが、携帯電話を使って人を誘導する試み自体は、いまとなってはそれほど珍しいものには見えないかもしれない。しかし、今回のゲームにおいて本当に特徴的な部分は、実はラリーのコースを設定する仕組みの部分に隠されている。
一定の決まった道順を散策する場合、歩くスピードが速い人とそうでない人の間で、ゴールするまでの時間に差が出てしまい、ラリーのようなゲームでは体力に自信のある人が有利になってしまうことが多い。しかし今回のシステムでは、各参加者がひとつのチェックポイントから次のチェックポイントまで歩くのにどれだけの時間を要しているかをカウントしており、歩くのが速い参加者には遠くの場所、遅い参加者には近くの場所を次のチェックポイントとして指示するような仕組みになっている。これにより、足の速い人でも遅い人でも、5つのチェックポイントを巡ってゴールするまでの基準時間はおよそ1時間15分程度になっているという(ただし、実際は食事やコース外への寄り道などで、それ以上を要しているチームが多かった)。
応用例としては、テーマパークで見て回りたいアトラクションの中から混雑度に応じて最適な巡回ルートを指示する案内システム、企業のプロモーションイベントなどで出展者がアピールしたい商品ブースの集客を促進するPRシステムなどが考えられる。また、今回のネイチャーラリーでは実験的な試みとして、加速度センサーやGPSレシーバーを取り付けたウェアラブルコンピュータを装着し、装着者の姿勢(歩行中/静止中/座っているといった区別)やより正確な位置を取得し、HMDを通じて適正なペース配分を指示するといったシステムも運用された。
見事優勝し賞品のiPod shuffleを獲得したチーム名「くりくり」さんのおふたり。府内在住で万博公園には何度も足を運んでいるということだが、この日は「来た甲斐があった」と笑顔を見せる。勝因は「ボーナスポイントを見つけるまでの『ねばり』」とか |
この日はゴールまでの所要時間は問わず、クイズの正答や、公園内の数カ所に用意されたボーナスポイントの発見などを得点化して参加者の順位を決定した。ボーナスポイントの存在は知らされておらず偶然発見した人だけが得点を獲得できる、クイズの問題が表示されてから回答を送信するまでの時間も実はカウントしているなど、さまざまな隠し要素が用意されていた。ゲーム中にたどり着いたチェックポイント、クイズの正答、移動距離、所用時間などをプリントした認定証がゴールでプレゼントされたほか、このネイチャーラリーが「園内のこれまで訪れたことがない場所へ行くきっかけになった」といった声も聞かれ、参加者の反応も上々だった。
同機構では今回の試みの結果や参加者の意見を基に、より満足度の高いエンタテインメントの仕掛けや、使いやすいシステムの開発、ウェアラブル機器への応用などを検討していく。