AOSテクノロジーズは6月8日より、PC用ソフト「ブレインフィットネス」を発売する。同製品は、脳研究の世界的権威であるベルナルド・クロワジール博士の多年に渡る脳の老化と認識力の研究成果を基に製作され、初期症状のアルツハイマー病患者の症状改善などに効果があるとしている。そこで今回は、クロワジール博士や開発を手がけたScientific Brain Training(SBT)社のCEOミシェル・ノワール氏らに同製品の魅力や開発の経緯について聞いた。

インタビューにはScientific Brain Training(SBT)社のCEOミシェル・ノワール氏やベルナルド・クロワジール博士、AOSテクノロジーズの佐々木隆仁社長、フランク・ターピン氏が参加した。

ノワール氏が同製品の開発に携わった契機は義父の死だったという。「政治家を辞めた後、第二の人生として脳科学の勉強をしようと大学に進学しました。その当時、義父が認知障害を患い、なすすべも無く他界したことが自分にとって非常にショックで、もし認知障害を抑制する薬があればと悔やみました。そこから、認知機能を高めたり、認知障害の進行を遅らせるソフトができないかと考えたのです」(同氏)。

ミシェル・ノワール氏 1944年5月19日生まれ, SBT社の共同創業者、CEO。1966年パリ法学修士取得し、1999年 リヨン大学にて認知心理学を研究。2000年にScientific Brain Training (SBT) Dr.CROISILEと共同で創設する。フランス貿易省大臣やフランス議会議員、リヨン市長などを歴任。元フランス代表ボートチームのメンバーでもある。3冊の政治エッセイと5冊の小説の著書あり。趣味は俳句など

当時、ノワール氏が通っていた大学の教授がベルナルド・クロワジール博士だった。ノワール氏はクロワジール博士に対してソフト開発を持ちかけ、2000年にSBT社が発足した。そして完成したのが「ブレインフィットネス」だ。

脳の認識は記憶力、注意力、言語力、推論力、視覚と空間の認識力の相互作用により行われるという。ブレインフィットネスでは、脳全体の認知力を高めるために、これらの5つの認識力を高めるプログラムで構成されている。ブレインフィットネスの魅力についてノワール氏は「まずは科学的に分析されたソフトであるということ。そして簡単なレベルから始められ、出た結果に基づいた指導が行われることや、自分のレベルを相対的に比較できるということが挙げられる」と指摘した。

ベルナルド・クロワジール氏 1958年7月29日生まれ,神経科学における世界的な権威(Ph.D.)、神経科医(MD)。 1987年クロード・ベルナール大学で医学の博士号取得。1998年にアルツハイマー病の研究で、パーク・デイビット賞を受賞しており、老化と認識に関する論文を数百回も科学出版物、新聞、百科事典などに寄稿している脳研究の権威でもある。現在、リヨン大学医学部にて、言語障害の治療と、心理学の講師を務めている。2000年にSCIENTIFIC BRAIN TRAINING (SBT社) をノワール氏と共同で創設。現在、SBT副社長

同製品の効果について、クロワジール博士は「1週間に3回、1回につき20分間ずつブレインフィットネスを使ってもらったところ、5つの認識力がすべて向上するという結果が出た。集中力を高めるのにも効果がある」と自信を見せた。さらに、実際にテストを受けた人が徐々に結果が良くなっていくことを実感できることや、自分の弱点が分かることで非常に満足感を得たという。

PC用ソフト「ブレインフィットネス」

同製品は、フランス、ドイツ、イギリス、スペイン、イタリア、アメリカなどでの販売実績がある。リテール市場での販売実績は約30万本。法人は、薬品会社、保険会社、幼児教育機関、老人ホームなどとの提携による販売が約50万本で、合計80万本に上る。ノワール氏は「世界のトップ15の国にとって高齢化は社会的問題。高齢化に伴う認知機能の低下を防ぐ『予防』が私たちの目指すところです」と力を込めた。

記憶力を高めるプログラム「世界一周」では世界中の様々な建造物や場所を記憶する

こちらも記憶力を高める「どんな旗だった?」。形や色、模様など旗の持つ色々な要素を記憶する

同社では、記憶障害を治療する目的で使われるソフト(日本未発売)も販売しているが、今回発売されるブレインフィットネスは「治療目的というより、認知障害の進行を遅らせたり、認知機能を向上させるためのソフト」(クロワジール博士)と位置づけている。

5つの脳力がグラフで表示され、各部門で獲得したメダルも示される

得点によってメダルの色が変わる

日本語版の販売を手がけたAOSテクノロジーズで、脳力トレーニングソフトを手がけたのは初となる。同社の佐々木隆仁社長は「日本の脳トレ市場は世界的に見ても、最も活況を呈しているといって過言ではないでしょう。ニンテンドーDSでヒットした脳トレソフトは700万本以上も売れて、さらに家庭用ゲーム機からアーケードゲーム機に至るまで脳トレの関連ゲームは巷に溢れています。ただし、今回我々が販売するブレインフィットネスはこれらの脳トレゲームとは一線を画します。なぜなら、ブレインフィットネスはゲームではなく、あくまで認知機能を向上させたり、認知障害の進行を遅らせるという目的に合わせたプログラムを提供しているからです。そういう意味で、本当に認知機能の低下を心配する方に役に立つソフトといっていいでしょう」と語った。同社では今後、家庭用ゲーム機への移植やシニア携帯のキラーコンテンツとしても販売していく予定。

AOSテクノロジーズの佐々木隆仁社長

日本語版と海外版との違いはほぼ無いというが、同ソフトの開発に携わったフランク・ターピン氏は「例えばフランスで発売しているブレインフィットネスには『俳句』というプログラムが入っているが、日本人は違和感を感じるだろうと考え、日本語版には入れていない。また鳥の鳴き声などを記憶するプログラムも、日本にいない鳥が収録されていたので省いた。このように文化によって多少変えられているが基本は同じ」と説明する。

同ソフトの開発に携わったフランク・ターピン氏

PC用ソフトは全国の量販店やPCソフト売り場で販売する。価格は8,190円。対象OSはWindows 2000 / XP / Vistaとなっている。また、6月1日からはNTTコミュニケーションズが運営するISP「OCN」のコンテンツとして、オンライン版が提供されるという。