マツダは、ロータリーエンジン車の発売開始から40周年を迎えた。これを記念し、開発者とREファンとの交流イベントや、40周年記念ウェブサイトなど、各種の催しが予定されている。これまでにマツダが生産したロータリーエンジン車は、累計で約197万台(2007年4月末現在)となっている。
時代を乗り越えるマツダ・ロータリーエンジン
ロータリーエンジンは1950年代末頃から世界中の自動車・二輪メーカーが実用化に向け研究・開発を進めた。一部市販したメーカーもあるが、ほとんどが開発を断念。その中でマツダは技術的課題を克服し、本格的な量産化に成功した。1967年5月30日に世界初の2ローターRE車「コスモスポーツ」を発売。その後も、「ファミリアロータリークーペ」「カペラ」「ルーチェ」「ロードぺ─サー」「サバンナ」「コスモ」「RX-7」「ユーノスコスモ」などのRE車を発売してきた。
モータースポーツの分野においても、マツダは1968年からRE車でのレース活動を開始。1991年には「ル・マン24時間耐久レース」で「マツダ787B」がRE車としては史上初、日本の自動車メーカーとしても唯一の総合優勝を果たした。このほか、国内ツーリングカーレースでの100勝達成、アメリカIMSAシリーズでの100勝達成など、輝かしい戦績を残している。
2003年4月に発表した「RX-8」では、小型化・高性能化と環境性能の向上を進めた自然吸気の新世代RE「RENESIS(レネシス)」を搭載した。また、CO2を全く排出しない「水素RE」の開発に1991年より取り組んでいる。2006年2月からは「水素RE」を搭載した「マツダRX-8ハイドロジェンRE」をリース販売しており、すでに7台の水素RE車が一般に使われている。
マツダの井巻久一代表取締役社長兼CEOは、「ロータリーエンジンはチャレンジ精神旺盛な企業風土のもとで、先達が不屈の精神で実用化を成し遂げた、まさにマツダを象徴する存在である。今後も我々はロータリーエンジンの研究・開発を継続していく。次世代の環境エンジンとして期待される『水素ロータリーエンジン』についても、すでに実用化レベルに至っており、さらに研究・開発を進めていくことでロータリーエンジンによる新しい価値の創造に挑戦していきたい」と語った。
ロータリーを積んだバイク
ロータリーエンジンは、ピストンが上下する通常のレシプロエンジンとはまったく異なり、三角おむすび型のローターが繭型のハウジングの中を回転する構造を取っている。ローターとハウジングのすき間が燃焼室になり、ローターの回転に伴って吸気→圧縮→爆発→排気という4サイクルの燃焼行程が行なわれる。特性としては4サイクルよりも2サイクルエンジンに近いと言われ、NOxの排出がが少なく、HCが多いのも同じ。
ロータリーの特徴はエンジンサイズがコンパクトで、振動が少ないこと。考えようによっては二輪に最適なエンジンともいえる。しかしコンパクトといっても膨大な熱に対する冷却装置などが必要になるため、250cc単気筒エンジンのようにはならないと考えられる。
多くのメーカーがロータリーを断念したが、数少ない市販にこぎつけたメーカーのひとつがスズキ。1974年に500ccシングルローターの二輪車「RE5」を発売した。マツダと同じようにNSUバンケルから基本特許を購入し、さらにマツダから周辺特許を受けて完成させた。それでも開発は苦労の連続で、何度もドイツのNSU社へ飛んで行ったという。
RE5のデザインはイタリアのジウジアーロが手がけた。当時としては非常にあか抜けたスタイルにまとまっている。また、日本国内でも販売すべくスズキは努力したが、排気量換算の問題が解決されず、国内販売を断念(当時、750cc以上は国内で販売されなかった)。輸出専用のモデルとなった。
しかしRE5は短命に終わった。その理由は性能や信頼性ではなく、オイルショックだった。スズキの他、日産やいすゞ、トヨタ、ヤマハ、海外ではメルセデスベンツ、ポルシェなどもロータリーを開発していたが、ほとんどはオイルショックのために断念している。マツダもこれで苦労したが、当時は「ロータリーは燃費が悪い」というイメージが非常に強かったためである。
現在、燃料水素や電気自動車の開発は活発だが、ガソリンエンジンはその存続すら危ぶまれている。まったく新しい形式のエンジンが作られるとは考えにくい。その意味でも、ロータリーというユニークなエンジンが作られ続けていることを喜びたいと思う。