Java EE 6に向けた取り組み
三つ目のセッションは、野村総合研究所の野上忍氏と、日立ソフトウェアエンジニアリングの河村嘉之氏によるJava EE関連技術のセッションであった。
今回のJavaOneでは全体的にJava EEに関する話題は低調だったとのことであるが、それは「Java EE 5という大きなリリースを昨年終えたばかりで、次のJava EE 6での変革に向けての準備段階だからだ」と河村氏は語る。
詳細な内容は関連記事でも語られているので、この記事では多くを語らないが、要約すると以下のようになる(正式に決定されたものではないので、後に変更される可能性は大いにある)。
EJB 3.1 - EJB 3のマイナーアップデートである新バージョンにおいては、EJBを独立したJARにパッケージングする必要がなくなるなど、さらなる使い勝手の向上が図られる。コンポーネント化の促進というEJBの当初の思想からは外れるように思えるが、「小規模な開発においては効果的だろう」と河村氏は語った。他にも、EJBのメソッド呼び出しを複数のスレッドが並行的に呼び出せるようにするための制御など、様々な機能拡張が予定される。
Java Persistence 2.0 - 以前は「Java Persistence API(JPA)」と呼ばれていた仕様であるが、どうも今回のJavaOneからは「Java Persistence(略してJP?)」と呼ばれるようになるようだ。ご存知のとおり、JavaにおけるO/Rマッピング用APIである。現在では、Hibernate、Toplink、OpenJPAなどのプロバイダが存在するが、JPA自体には機能が不足しているために、それらのプロバイダが提供する拡張を利用せざるを得ない場合も多い。Java Persistence 2.0ではそうしたプロバイダ依存の機能を標準に取り込み、さらにJSR-303 Bean Validationなど、他のJSRとの連携も視野に入れた改善を盛り込む予定だ。今後のスケジュールは未定だが、そうした改善を部分的に取り込んだバージョン1.1を出す可能性もあるとのことである。
WebBeans - JBoss Seamが持つ機能を標準化しようとするのがJSR-299 WebBeansである。Seamの素晴らしい点は、JSFとEJB 3の間で完全に異なっていた、コンポーネントモデルを統一したこと。Seamを使うと、JSFのManaged BeanとEJBを区別なく扱えるようになる。Web Beansは、現在のSeamに存在しない機能も見据えて仕様策定が進んでいるようだ。例えば、現在のSeamが持たないクラスタレベルのスコープや、より進んだBean検索メカニズムなどが導入されるとのことだ。
Spring Framework - 未だSpringの人気は衰えることなく、もはやJavaにおいてSpring対応を見据えていないプロダクトなどあまりないのではないかと思える。今回のJavaOneでもSpringに関連するセッションは6つもあったとのことで、アノテーションによるコンテキスト定義が目玉となるバージョン2.1や、バッチをSpringで行えるようにするというプロジェクト「Spring Batch」などには今後注目したい。
GlassFish - オープンソースJava EEアプリケーションサーバであるGlassFishは現在、バージョン2の正式リリースに向けて前進しているところだ。Java EE 5の仕様を完全実装したプロダクトだというだけでも十分特徴的ではあるが、バージョン2ではさらにクラスタリングのサポート、非同期リクエスト処理、あらかじめ用意されている設定プロファイルによる設定作業の簡易化、WSIT(Web Services Interoperability Technologies)による.NET Webサービスとの親和性向上などが挙げられる。さらにバージョン3では、IoC(Inversion of Control)によるモジュール化を進めて100キロバイト以下のサーバカーネルを目指すうえ、JRubyやPHPなど多くの言語を実行できるコンテナを整備する予定だという。
他にも、jMaki、PhobosといったAjaxやスクリプト関連の話題も出たが、ここでは割愛する。
さらに、こうしたセッションの後は軽い飲食とともにBOFが開催され、フォトレポートやトークイベントなどが開催されたとのことである(筆者は都合により出席できなかった、残念)。
JavaOne 2007には参加できなかった筆者だが、今回の報告会により、JavaOneというイベントで行われる発表の膨大さに改めて感心した。そしてそれは、登場して10年以上を数えてなお、多くの開発者の関心をひきつけてやまない稀有なプラットフォームだということの証でもある。Javaについては今後も、こうした発展が続き、コミュニティに支えられる存在であってほしいと心から願う。
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