数値とカメラで現状を詳細に把握
こうした仕組みによって算出されたデータは、OCC(Operations Control Center)で監視している。OCCのデータは、モバイル情報端末「BlackBerry」を介して現場のマネージャも閲覧することが可能だ。また、OCCのデータをうまく活用するために、IT技術者だけでなく、アトラクション、小売店舗、レストラン、駐車場などのマネージャも召集してワークショップを定期的に開催。経営層と現場が円滑に連携できる環境を整えているという。
加えて、ディズニーランド・パリでは、小売店舗やレストランなど、園内の各所に監視カメラを設置。問題が発じた個所がどのような状況になっているのかを目でも確認し、「レストランであればホールの従業員が少ないから混雑している、といった原因分析に役立てている」(イアフラット氏)という。また、小売店舗のレジでは、担当従業員のパフォーマンスも計測。その数値もデータベースに記録されている。
こうした取り組みにより、現在では、「なぜこの時間帯のこの部分でトランザクションが停滞するのか、理由がわかるようになった」とイアフラット氏は語る。「原因がわかるからこそ、対策を施せる。継続的な最適化を施すには、継続的な監視が重要だ」(イアフラット氏)と、行動を常に監視することの重要性を強調した。
適切な粒度で情報を提示
オペレーションBIを成功させるためのポイントについてイアフラット氏はさらに、「データアクセスのタイミングと粒度が重要」と語る。特に粒度については配慮しており、詳細な数値を表示するだけでなく、正常に稼働しているポイントは緑、滞り気味のポイントは黄色、問題が生じているポイントは赤というように、現場の状況を色分け表示する機能も用意。監視者や従業員が現状を一目で把握できるよう工夫を凝らしている。
マーケティングや長期ビジネスにも反映
もちろん、こうしたデータは長期的なビジネスにも反映させなければならない。ディズニーランド・パリでは、オペレーションデータを、SAPの財務システムや各種データマートとも連携できるようにし、「適切なタイミングで適切な情報にアクセスするための基盤」を作っている。
さらに、ディズニーランド・パリでは、マーケティング部門とも連携してさまざまなキャンペーンを実施している。例えば、開園前/閉園後の数時間を限られた人数で利用できる「Extra Magic Hours」といったチケットを販売。顧客満足度の向上を図るとともに、トランザクションの集中を緩和する方策を練っているという。
イアフラット氏は講演の最後に、「プロジェクトを成功させるには、技術ではなく、ビジネスプロセスにフォーカスすることが大切」と述べ、価値を中心に据えたシステム構築に取り組むべきであることを強調した。
来園者に満足してもらうために技術をどのように使うべきか。この点を模索しながら、夢の国の経営改善は続く。