フィンランドの大手通信企業Elisaは21日(現地時間)、近距離無線規格であるNFC(Near Field Communication)を用いたフィールド実験を展開中であることを発表した。SIMカードレベルでのセキュリティを特徴とし、携帯電話を用いて安全にチケッティング、支払い、トランザクションなどが行えるという。
NFCは約10cmの範囲、周波数帯13.56MHzで非接触通信が可能な通信規格。ソニーとオランダPhilipsが中心となって開発した技術で、「ISO 18092」として国際標準に承認されている。日本のSuica、Edyが利用する「FeliCa」と上位互換がある。
Elisaでは現在、仏Gemalto製のNFC対応SIMカードおよびNFCアンテナを搭載した仏Sagemの携帯電話を利用して、フィールド実験を展開中という。用途としては、乗車券の購入、買い物での支払い、ユーザー認証などでテストしており、中でも乗車券については、時刻表情報の入手、一日乗車券のようなトラベルカードのダウンロードなど、さまざまな派生サービスに展開できるとしている。同社の本拠地であるフィンランドの首都ヘルシンキでは、2002年にテキストメッセージングを利用した乗車券の購入サービスがはじまっており、NFCによりユーザーにさらなる利便性をもたらすという。
Elisaによると、同社のNFCサービスの特徴は、携帯電話内のSIMレベルでの安全性と使い勝手。NFC対応SIMカードは、Single Wired Protocol(SWP)技術を用いてNFCマイクロチップとSIMカードを接続したもので、SIMカード内でアプリケーションを格納できるため、安全性に優れるという。また、このSIMカード向けに開発されるアプリケーションは、最新のSmart Card Web Server(SCWS)機能を用いることで、使いやすいユーザーインタフェースを利用できるほか、無線ネットワーク内で安全に管理できることから、サービスプロバイダはメンテナンスや管理を容易に行うことができる。
このようなメリットから、Elisaは「NFCサービスを展開するにあたり、SIMベースは重要な目標だった」と説明している。同社はすでに、通信に関するフィンランド政府機関「Finnish Federation for Communications and Teleinformatics(FiCom)」や国際団体でモバイル環境でのNFC利用を促進しており、今後、フィンランド国内の公共輸送機関におけるNFCの利用を積極的に促進していく計画だ。商用サービスについては、2008年スタートを見込むとしている。