また、スウェーデンのチャルマース工科大学と自動車メーカーのボルボは、ブレーキ・バイ・ワイヤー(現在の車のように油圧ではなく、電子的な信号でブレーキ制御情報を伝達する将来のブレーキシステム)のプロトタイプにエラーを注入して測定を行った結果を発表した。制御を行うマイクロコントローラのレジスタとメモリにエラーを注入した結果、約45%は無害、22%はハードウェアでエラーが検出されて割り込みで通知され、約30%は検出漏れ、約3%がハングになったという。ハードで検出されたエラーはソフト的に救済されるが、全体として15%が30ms以上の時間、ブレーキがロックする、或いは、全くブレーキが利かないという重大なエラーとなったと報告された。

もちろん、このシステムは初期のプロトタイプで、実用化に向けては多くの改良が続けられていくのであろうが、その一環として、このようなソフトエラーに対する研究が行われているというのは安全性を高めるという面で心強いことである。

前記のIBMや富士通の実験に較べて無害となる比率が小さいが、やはり、マイクロコントローラは小規模であり、殆どのレジスタやメモリが有効なデータを保持している率が高いというのが原因であると思われる。

20件の論文のうち日本からの発表は2件で、もう1件は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の発表で、半導体チップに放射線粒子があたった場合の電荷発生によるノイズの値を精度良く、高速で求める方法に関する研究発表である。宇宙空間では空気による減衰なしに超々高エネルギーの粒子が飛び込んでくるので、ロケットや人工衛星に搭載する電子機器では、地上機器と較べて格段に高い耐放射線性が要求され、このような機器の開発に関する基礎的な研究である。

その他に、ラッチエラーの発生自体を低減する研究や、発生したラッチエラーの影響を軽減するアーキテクチャなどが発表されたが、内容が専門的であるので割愛する。