一方、富士通は、大阪大学の核物理研究センターの中性子ビーム発生装置を利用して、PRIMEPOWER 650サーバのSPARC64 V CPUに中性子を当てて発生するエラーを測定した結果を発表した。SPARC64 Vプロセサは2003年のISSCCで発表されており、メインフレームプロセサ以外では最初に論理回路のエラー検出、訂正を実装したプロセサであり、その点ではPOWER6に約5年先行している。
結果は、93.6%のラッチエラーが無害であり、4.9%がハードウェアでのエラー検出、訂正が成功、1.5%がハングやリブートなどの障害を引き起こしたという。無害の部分を除くと、77%のエラーがハードウェアで訂正されている。
そして、このようなエラー訂正を行っているので、普通の地上での強度に換算すると、中性子によるSPARC64 V CPUのエラー率は10fitを十分下回る(数万年に1回のレベル)とその高信頼性をアピールした。
このような粒子ビームを使った実験は確率的なばらつきが含まれるので、IBMと富士通の実験結果の数値の違いが意味がある程度のものか、あるいは実験のばらつきの範囲内の差であるのかは不明である。両社のプロセサともに現状では最高レベルのエラー検出、訂正機構を備えたハイエンドプロセサという点は一致しているが、まったく独立に開発された2種類のプロセサで、無害のエラーの比率や、ハードウェアによるエラー訂正の成功率などが非常に似通った値になっていることは非常に興味深い。
富士通は6種類のプログラムを動作させてエラー率を測定しており、浮動小数点演算を多用するSPECfpベンチマークのプログラムの方が、整数系のSPECintベンチマークのプログラムよりハードウェアによるエラーの検出率が高いと報告している。そして、この違いは、整数系プログラムでは浮動小数点演算機構を使わないので、この部分で発生したラッチエラーは無害になってしまうが、浮動小数点演算を多用するプログラムの場合は、この部分で発生したエラーも検出対象となる点に起因していると考えられると述べている。
このような実測実験は、ビーム施設を借用しサーバを持ち込んで実験する必要があり、かなり手間が掛かることと、結果が良くないと値を出したくないということもあり、具体的な数値が論文発表されることはまれである。その点で、今回のSELSEではトップレベルの2種のプロセサの実測結果の発表がそろったということで参加者の関心が高かった。