NTTドコモの中村維夫社長

NTTドコモは、2006年度連結業績を発表した。売上高は対前年度比0.5%増の4兆7,881億円、営業利益は同7.1%減の7,735億円、当期純利益は同25.1%減の4,573億円で、増収減益となった。2006年度は携帯電話における番号ポータビリティ(MNP)が開始されたが同社は苦戦気味で、転入・転出を合わせると63万契約の転出となり、営業利益は予想を下回る結果となった。2007年度の連結業績予想は、売上高が同1.3%減の4兆7,280億円、営業利益は同0.8%増の7,800億円、当期純利益は同4.1%増の4,760億円を見込んでいる。

同社代表取締役社長の中村維夫氏は、MNPのここまでの結果を総括して「純減という点では、決していい結果ではなかった」と述べ、その要因としては、「3Gネットワークと料金」を挙げた。「ネットワークについては、しゃかりきになって(基地局増設を)やっているが、FOMAを始めたときの(つながりにくいとの)印象を深く反省している」と話す。料金は「ソフトバンクを別にすれば、KDDIとは大きく変わらないが、ドコモは高いとのイメージを払拭できなかった」としている。ただ「今後はMNPの影響は薄まり、心配はしていない」とも付け加えた。

携帯電話収入(FOMAおよびmova)は同0.6%増の4兆1,826億円で、FOMAの音声収入は同53.3%増の1兆7,930億円、同じくパケット通信収入は同58.5%増の9,719億円となっている。さまざまな料金プラン導入の影響があったが、また、今期から「2ヶ月くりこし」失効見込み額を収益に計上したことも反映されている。

FOMAへの移行は順調に進んでおり、2006年度末には契約数が3,552万9,000に達し、携帯電話契約全体の67.5%にまでなっている。同社では、2007年度末には4,442万契約、同82.4%との水準になると予想している。その反面、FOMA販売比率が上昇したことで端末機器原価が増加したこととともに、単末販売数が前年度より100万台多い2,600万台となったことにより、代理店手数料など販売経費が上昇、営業費用は同2.1%増の4兆146億円となった。2007年度はFOMAの販売比率上昇が収束してくる見通しで、同社では「端末調達価格が低減するフェーズに入る」(中村社長)とみており、調達価格の安い70xシリーズなどの販売比率が5割以上になる見込みで「調達コストは明るい展望」(同)であるという。

2006年度末の総契約数は同2.9%増の5,262万1,000、シェアは同1.3ポイント減の54.4%、解約率は同0.01ポイント増の0.78%で「MNPによる影響は小さい」としており、2007年度末の総契約数は5,389万と予想している。総合ARPU(1端末あたりの月間平均収入)は同3%減の6,700円、音声ARPUは同6.8%減の4,690円、パケットARPUは同6.9%増の2,010円だった。「音声が低下、データが増加するとの傾向は変わっていないが、ARPUの低減幅は着実に縮小している」(同)。パケット通信料定額サービスの契約数はこの1年で約2倍に増え956万、契約率は約27%となり、今年5月1日には1,000万を突破する模様だ。

設備投資は同5.3%増の9,344億円で、そのうち6,650億円はFOMA関連に充てている。2006年度は屋外基地局を1万1,700局、屋内を4,000局増設し、合計で4万6,100局となった。2007年度は、FOMAサービスエリア拡大にともなう設備投資が減少することから同19.7%減の7,500億円とする予定だが、基地局はさらに拡大する意向で、屋外は7,000局、屋内は3,500局増やす。

先日、新製品「904i」シリーズを発表した際、同社は「DoCoMo 2.0」との販促戦略を打ち出し、「ドコモは変わる」と宣言している。電話番号、メールアドレスなどを2つ使い分けることのできる「2in1」サービスは「2台の携帯電話をひとつの端末に詰め込んだ」もので、新戦略の先兵となる。「他社にはそう簡単に追随できない」サービスとして、MNPでの劣勢を挽回する切り札となる。

しかし、ドコモがどう変わるのかはまだ判然としない。2in1にしても、これでどれだけシェアを拡大するのか、というような見通しは未だ立てていないようだ。また、下り3.6MbpsのHSDPA、さらに上り方向を高速化するHSUPAでの新たなアプリケーションなどはまだ明らかになっていない。とはいえ、中村社長は「これまで競争を続けてきた。これからも競争は重要ではあるが、それとは別に、新しい視点で、もっと先のことを考えることも必要なのでは」と指摘する。また「市場全体が年間1,000万台も増えていた時代といまはちがう。パソコンもインターネットも変わっている。新しい成長を目指したい」とも語る。さらに「グローバルの環境をみると、アジアに3Gが入ってくる。アライアンスを組みながら、iモードの展開、ローミングなどをしていくのが一つの施策だが、資本関係をどうするかなど検討が必要だ。日本のことだけを考えている時代ではない」としている。変化の節目を迎えていることだけは確かだ。