4月18日未明、横浜・八景島シーパラダイスのアクアミュージアム(水族館)内のハイイロアザラシ展示室でハイイロアザラシのメスの赤ちゃんが産まれた。誕生時の体長は87センチメートル、体重は11.6キログラム。

誕生当日のハイイロアザラシ

飼育者たちが母親であるルーシャ(9才、ポーランド・ワルシャワ動物園生まれ)の妊娠に気付いたのは昨年11月。お腹がかなり目立つようになり、妊娠が確認された。出産予定日は記録にあった交尾の日から割り出した。普段は水槽に水が張られているが、臨月はその水も抜いて出産を待ち、18日早朝、見回り係が誕生した赤ちゃんを発見した。

父親のディータル。17才、ポーランド・ワルシャワ動物園生まれ

母親のルーシャ。9才、ポーランド・ワルシャワ動物園生まれ

誕生後、しばらく母親が母乳をあげるのを待った。母親は赤ちゃんが自分の子供だという認識はあっても具体的にどうしていいかわからない様子。授乳しやすい体勢をとる手伝いもしたが、午後になってもうまくあげられないため、同日夜、人工飼育に切り替えて飼育係が餌を与え始めた。

あまりに豪快な寝相に「死んでるの!?」と騒ぐ人も

人口飼育のためか、人懐こい

最初は哺乳瓶で犬用のミルクをあげていたが、うまく乳首を吸えなかったため、ホッケの3枚おろしを用意。口に押し込むように食べさせた。最初の3日間は思うように食べられない場面もあり心配されたが、4日目からは自分から求めて食べるようになった。餌の量は1日800グラム。他にはポカリスエットやビタミン剤、整腸剤を与えているという。

名前はまだない。「もう少し育ったら公募も含めて検討中」(広報)とのこと

母の名をもじり「ルーコ」、馬面だから「ウマコ」、そしてなぜか「コロちゃん」など、係の人は思い思いに呼ぶ

ペットボトルで遊ぶ赤ちゃんハイイロアザラシ

人工哺育の様子はアザラシ展示室隣の多目的水槽で見ることができる。1日4回の餌の時間以外はほとんど寝ているが、時折目を覚まして大きな目で観客を凝視する姿は非常に愛らしい。ハイイロアザラシを日本で初めて飼育展示した八景島シーパラダイスだが、その後も飼育例は少なく、赤ちゃん誕生も国内で初めて。「前例がなくすべてが手探りですが、飼育係一同で助け合い、赤ちゃんのコンディションに合わせて無理せず育てていきたい」と飼育係の佐藤千登勢さんは話す。

食後は少し遊ぶが、

すぐにまた寝てしまう

なお、名前のとおりハイイロアザラシの体はグレーや白、または黒い体毛で覆われているが、生まれた直後はフサフサした黄金色。数週間かけて徐々に白く短い毛に生え変わり、見た目も大人と同じ色になるが、この赤ちゃんの場合はお腹にいた時からすでに毛が抜けており、取材した生後6日目の段階で既に背中が灰色に変わっていた。アザラシの成長はとても早く、ゴールデンウィーク明けには水の入った水槽へ移すプランも挙がっているという。大人になるまでは約5年と言われており、その頃までには母親のルーシャと同じ体長2メートル、体重約150キロ程度に成長すると見られている。