私、映画って、基本的に邦画しか観ないんです。だって、せっかく役者さんが演技をしていても、外国語で話されたら、微妙な言葉の間とかニュアンスとかがわからないじゃないですか。なんか映画の価値が減ってしまう気がして……だから、字幕であれ、吹き替えであれ、外国のはあんまり観る気が起こらないんです。

そんな私に、担当編集さんから映画『バベル』のレビューを書かないかとのお誘いが。邦画オンリーの私でも今回の『バベル』は特別。だって、役所広司サマが出てらっしゃるから。

役所広司(3月の記者会見)

引きこもりがち@京都人な私は旅行慣れしてないため、新幹線の座席予約すら大きなハードルでした。でも、これも全て役所サマのため! 片道3時間かけて行きましたよ。

東京に着いてからも、六本木の試写室までの道で微妙に迷ったし、人は多いし、横断歩道は複雑やし……。

やっとの思いでたどり着いた試写室には、開映の1時間前にも関わらず、既に10人以上のお客さんが並んではりました。座席は40程度と聞いていたので、いい席に座れるか不安でした。開場と共に「特等席は譲らへんでぇ。」と、闘志をメラメラ燃えあがらせて、館内へすべり込みました。そして、見事ど真ん中の座席をゲット。

「これで、役所広司を堪能できる!!」

いそいそと頂いたパンフレットを開き、一通り目を通したあと、集中するために仮眠まで取りました。

役所さんのことは中学生の頃から好きだったんですけど、大学生の時に『CURE』というホラー映画を観てから、本格的にファンになりました。セリフ回しもさることながら、とにかく「表情の演技」が上手いんです! 特に、怒りとか悲しみとかネガティブな感情表現が巧みなんです。たぶん、表情だけじゃなくって、出してはるオーラとかも関係してるんでしょうけどねー。

もちろん明るい役も似合うんですけど、私は"狂気じみた役所広司"が一番好きなので、「できれば映画の中では、ずっと不幸でいて欲しい」と願わずにはいられないのです。

そんな訳で『バベル』。

いよいよ開映。意気込んで試写に臨んだ『バベル』での役所さん登場シーンは――たったの2シーンのみ。

この、まさかの展開には驚きが隠せませんでしたが……登場時間こそ少ないものの、役所さんは"キーパーソン"の一人だったので、それなりの演技も観られて満足できました。目線で語る演技に注目ですね。あと、娘役の菊池凛子さんも、話題になってた通り"体当たり"で良かったです。迫力があるというよりも、ただ訴えかけるような、そんな演技でしたねー。

で、肝心の内容はと言いますと、設定の複雑さのわりに「かなりシンプル」というのが正直なところです。4カ国を又にかけての撮影ということで、もっとごちゃごちゃした映画なのかと思っていたんですが、それぞれの関係性がはっきりしているので、案外ストンと入り込むことができました。

それに「言葉や心の壁」をテーマにしているせいか、セリフ回しよりも、役者さんの表情に重点を置いて描いている感じで、そういう意味では、邦画好きの私も楽しめました。国ごとに違うレンズとフィルムを使ったという映像の差異も見どころですね。私は、特にメキシコが好きかな。暑苦しい感じで。

決してフワフワした内容の映画ではないけれど、観た後にモヤモヤした気持ちにさせられるような映画ではなかったんで、気軽に映画館に足を運ばれては? と思います。

『バベル』は4月28日より、スカラ座ほか全国東宝洋画系にてロードショー。提供・配給はギャガ・コミュニケーションズ。 (C)2006 by Babel Productions,Inc.All Rights Reserved.