今回はソフトソースのプレーヤーとディスプレイの接続を考えてみる。特にデジタル接続が盛んになってきたこともあり、アナログとデジタルの違い、メリットなども紹介する。
アナログ接続とデジタル接続
ホームシアターを楽しむにはビデオプレーヤーとディスプレイ、それにアンプやスピーカーなどオーディオ機器が必要だ。それがDVDプレーヤーと薄型テレビであったり、また大画面プロジェクター、A&Vアンプであったりする。それらには接続がつきもので、初期の頃はアナログ接続といって、プレーヤーから映像も音声もアナログ信号で取り出し、RCAケーブル(ピンケーブルともいう)でディスプレイやA&Vアンプに接続していた。もっとも映像の初期の頃は、コンポジット接続といって複合化した映像信号で接続していた。VHSやLDビデオの頃である。その後、S端子と称し映像信号も明るさと色を分けた少し進歩した形式に変わったが、それでもVHSビデオなどだったから許されていたことだ。なお音声は早い段階でデジタル接続になり、光ケーブルで接続するように変わった。
大きく変わったのはDVDプレーヤーが登場してからだ。ビデオソフトがデジタル化されたDVDにより、ホームシアター環境も大きく前進した。それまでのVHSやLD(ビデオディスク)などアナログが抱えていた映像の緩さが解消され、鮮明でノイズの少ないクリアーな映像や音声が手に入るようになったからだ。この上質さを秘めたDVDソフトのパフォーマンスを発揮させるために、接続方法も見直しが行なわれた。その代表的が映像用のD端子接続である。もちろんこうなっても音声は光ケーブルによるデジタル接続である。
そのD端子はプレーヤーもディスプレイも両方で備えてはじめて性能が発揮されるが、映像の良さから一気に普及した。アナログ信号ながらもコンポーネント形式という新しい考え方を採用、明るさと色の信号の分離が上手く、干渉ノイズが少なく、しかも必要な帯域が確保されることから、鮮明な映像が手に入った。端子も特別な形を採用しており、簡単に接続ができるよう配慮された。
この便利で優秀なD端子も、2002年から採用の始まったHDMI端子(High-Definition Multimedia Interface)が登場すると徐々に置き換わって行く。HDMI端子はデジタル信号による接続を特徴とし、アナログ接続のD端子と比べ映像のシャープさで優る。昨今のプレーヤーやディスプレイが積極的にHDMI端子を設けるようになったことからもこの様子が分かろう。
HDMI端子のメリットはデジタル化、そして映像と音声の両方をまとめてデジタル接続できることである。はじめて映像と音声が1本で接続できるようになり、これがホームシアター環境を大きく前進させるのだ。アナログ接続では信号の干渉などもあり、映像と音声を1本のケーブルにまとめようとは考えないが、デジタル化することでこうした不都合からも開放されるため、採用されたとも言える。
ちなみにHDMI接続用の端子も専用タイプが開発され、確実さと伝送ロスの解消を図っている。なお、信号がデジタルになったため、信号ロスが抑えられることもあり、コピー(複製)防止面も考慮される仕組みになった。HDMIは、互いの機器どうしで認証を図り無断でコピーなどを行えないような仕組みを導入したのだ。これを支えるのがHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)で、これに対応した機器でないとプロテクトの掛かったソフト(DVDビデオなど)の表示や出力ができないような仕組みである。
HDMI接続の種類
デジタル接続の中心になりつつあるHDMIは、2002年から始まりこれまでにバージョンアップが繰り返されてきた。デジタルならではの早め早めの性能アップが狙いだが、最初のVer1.0から、Ver1.1、Ver1.2、Ver1.2aへとグレードアップしてきた。2006年秋からの最新版は、これがVer1.3になり、さらなる映像と音声の性能向上を図っている。
ちなみに映像はHDMI Ver1.0の時から1080p信号(走査線1080本のプログレッシブ表示)に対応していたが、当時は1080pが表示できるディスプレイがなかったこともあり、プレーヤーなどはあえて対応させないという配慮がなされた。これを踏まえてみると、そのつどのバージョンアップの主な狙いは音声面の改善と言える。
最新版のVer1.3はその音声にやや片よったところを見直し、映像面の改善も盛り込んでいる。それが「ディープカラー」と呼ぶ色再現性を高めたことだ。カラーの情報量を広げるため、ビット数を10/12/16ビットへと大幅に上げられるよう考慮した。また細部の映像描写に効いてくる解像度でも、フルHDを上回る画素数である2560×1536ドット(フルHDは1920×1080ドット)の伝送にも対応させるなど大きく前進している。
これらは映像や音声の性能改善に威力を発揮すると思われるが、配慮しなければならないことも出てきた。その1つが、HDMI Ver1.3接続はより性能の優れたHDMIケーブルを求めることだ。つまり、送る信号の性能が高まると言うことは情報量が高まることと同じで、伝送ロスを抑えた性能にシビアなケーブルを要するということを示す。特にケーブルの長さが5mを越えるような場合にはこのような配慮が欠かせず、場合によってはHDMI接続時の機器間の認証が取れず映像がでない、といったような症状も出てしまうこともある。そのような時は長さを5m以下にしたり、どうしても長いケーブルが必要なときはリピーターという増幅器を経由させなければならない、など何らかの対策が必要になるであろう。
HDMI接続とサラウンド
高画質なデジタル伝送ができるHDMIは、映像に加え音質の改善でも効果を発揮するようになっている。初期のVer1.0では単にDVDソフトをメインにしたドルビーデジタル(またはDTS)の対応だけだったが、その後Ver.1.1になりDCDオーディオを、またVer1.2ではSACD、さらに最新のVer1.3でHD(ハイビジョン)版音声へ対応と、映像の改善にも劣らない音の改善を考えるようになった。
こうしたことはソフト側の進歩と歩調を合わせているのだが、ハイビジョンパッケージソフトのHD DVDやBDのような、大容量化した新しいメディアの登場から、音に余裕を持たせたシステムが用意されてきたのだ。それに合わせホームシアターに欠かせないサラウンド環境もより迫力と移動感の向上を目指すのは当たり前であり、HD DVDやBDに設けられたデジタルサラウンドであるDolby TrueHDやDTS-HD Master Audioなどのように、最低でも5.1ch、余裕があれば7.1chかそれ以上の、質の優れたサラウンド音場を提供するようになったのだ。詳しくはまた別の機会にするが、デジタルHDMI接続は、こうしたサラウンド音場再生の改善にも大きな効果を与えているのである。